頭と心がバラバラで、身体は言うことを効かない。

 こんな事、初めてだよ。

 次のライブなんて、いつに為るか分からないのに。

 それどころか、彼らが解散する、って噂だって聞いたことがある。

 だから、今日は特に気合い入れて踊りまくるつもりだった。

 もう、嫌。

 今、自分に侵されている事が嘘でありたい。

 スピーカーから聞こえてくる大音量を少しでも遠ざけたく、両手で耳を覆った。

 それでも聴こえてくる。

 心臓にまで響くドラムのリズム、軽やかなギターの音色、あたし好みの甘い声で熱唱する彼らのハーモニー。

 お願い。

 もう歌わないで!
 演奏しないで!

 だけど、何千人と集まったこの会場を彼らが放棄するはずもなく、永遠とライブが続いた。



「あんた、何しに来たわけ?」

 急に頭の上から聞こえた、冷たく刺さるような声に我にかえった。

 あたし……。

 気がつけば、横にも前にも踊っていた人は、居ない。

 そして、声の主は──