まだ、捕まえられない祐希と、我が身を守ろうとするタマゴなスイカ。

 追いかけるから、逃げられる。

 そんな根本的な事を、忘れているようだ。


「さぁ、
 私の店にやって来たスイカちゃん、何があったのか話してくださいな」

『スイカなんかと一緒にしないで。
 ワタシは母さんを探しているだけなの』

「「母さん?」」

 やっぱりゴジラはいたのか、と皆は凍り付いた。


『ワタシは、農家のおじさんに愛情タップリと育てられた。
 なのに、ワタシだけみんなと違う形になった。
 悲しかった。
 悔しかった。』

「俺は、美味いスイカを食いたかっただけだ」

「私は、より美味しいものをお客様に提供するだけよ」

「スイカを追いかける祐希を連れ戻したかっただけよ」

『ワタシは、もう西瓜とは違うの。
 生まれ変わったの』

「「何に?」」

 タマゴなスイカは、それには答えず、また転がりだした。

 けれど、誰ももう追いかける者はいなかった。


「チキショー!!
 俺の美味そうな夏!!
 あんなに良い音したやつ他にはねぇぞ!!」

 唯一人、悔しがるのは祐希だけであった。