一方、八百屋を勤める葉子は、そんな騒動が起こっている事も知らず、呑気にしている。


「明日も楽しい野菜が届かないかしら?」

 なんて、呟きながら。


「ちょっと、偽りのスイカなんて売らないでよ!!」

 葉子が穏やかに浸っていた空気を害しにやって来たのは、悔しそうに言う涼香。


「あら、さっきはありがとう。
 ところで、偽りって何かしら?
 うちは、農家から直接仕入れている新鮮な野菜と果物だけを提供してますのよ?」

「貴女から買ったスイカを追いかけた祐希は、まだ、帰って来ないのよ!!
 何処まで連れていったのよ」

「お客様、スイカを追いかけるって、ただ転がったのでは?」

 スイカは丸いもの。

 坂道などだったら転がり行くのも不思議ではない。

 そのくらいにしか思っていない葉子は、客が何故剣幕を起てているのかが、検討も着かないのであった。