ピョンピョン、と跳ね回りながら逃げる箱は暑さを知らない。

 祐希は、バスケで鍛えた足があるとはいえ、夏の暑さには、かなり弱い。

 それでも、汗を拭いながら必死に追いかけた。

 何処までも
 何処までも。

 祐希は、とうとう浜辺まで追いかけてきた。

 箱の中の物体も動きが止まった。

 沢山暴れたせいなのか、檻の柵の一部分が外れた。

 見るからにスイカ。

 祐希は、いつものように甘さを調べるように

 コンコン、と軽く叩いた。


「やっぱ、美味そうな音するな」

『食べないで』

 微かに聞こえた声に、辺りを見回すも誰もいない。