開けるのに苦戦していた檻が、上下左右と揺れている。

 スイカが勝手に動き回るなんて、信じがたい。

 二人は、怖いもの見たさに

 一歩、一歩、と歩みよった。

 祐希と涼香は見た。

 箱が揺れているのではない。

 スイカと思われる物体が狭い箱の中で飛び回っているのだ。


「「お、お化けスイカぁぁぁ!!」」

 部屋中に響き渡る声に反応したスイカ、否、謎の物体は

 箱の中で転がる仕草をしては、檻ごとその場から逃げ出した。


「待て!!
 俺の夏!!」

「そんなもの、追いかけないでよ!!」

「きっと、特上に美味いスイカに違いないさ」

「動き回る物を食べられるわけないじゃない!!」


 涼香はキッチンに戻り、今見ている事が現実でないことにしたいため、音楽のヘッドフォンを耳に当てた。

 祐希は、逃げる箱を追いかけ始めた。