「あぁ、もうダメ。
 私のか弱い手が泣いているの」

「んだよ。
 まだ、始めたばっかりだろ?」

「おやつの用意してくるね」

 言ったら早い。

 サッサ、とキッチンに向かい、トウモロコシを茹で、紅茶を沸かし入れている。

 そんな涼香を見て、腹を立てる、というより毎度の事なので呆れ返っている祐希は肩をすくめた。


「俺も休憩しよっと」

 急にやる気を無くした祐希は、体を大の字にゴロン、と寝転がった。

 とその時

 コトコト
 コトコト

 微かに、何かの音が聞こえたような気がした。

 風が吹くほどの陽気ではない。

 むしろ、無風で溶けてしまいそうな暑さである。


 きっと、ネズミでも挨拶に来たんだろう。

 祐希は、ボソッ、と呟いた。


「ネズミですって!!
 は、早く追い払ってよ」

「何処にいるのか、知らねぇのに追い払えるか!」

 あぁ、また二人のコントが始まっちゃった。

 そうこうしているうちに、音は段々と大きくなり


 ガタガタ
 ガダガダ

 と不気味さを広められている。

 二人は一瞬、見つめ合い、音の正体を探るべく耳を澄ました。

 その先には、──