また次の日

 今日もこの小さな八百屋に足を運ぶ客たちで大忙し。

 トマトに人参、茄子、胡瓜……。

 と太陽の恵みをいっぱい浴びた夏野菜が飛ぶように売れている。

 そこへ、新しい顔の女性と男性が一組やって来た。


「これを食べなくちゃ、夏って感じがしないわね」

 ヒゲが茶色い、短く黄緑色した隙間から黄色い粒が顔を覗かせているものを差している女性。


「何言っているんだ。
 この、大玉を食わなきゃ夏とは言えねぇよ」

 緑色に黒い縞模様のボールを差す男性。


「スイカもトウモロコシも甘いですよ。
 両方如何かしら?」
 どちらも今朝送られてきたオススメですわ」

 二人のやりとりに、微笑みながら割って入って来た葉子。


「そうだな」

 一瞬、考えこんだ男性も手を

 ポン、と叩き葉子の意見に重ね合わせた。

「ちょっと待ってよ!
 予算があるのよ?
 今日はスイカを買う程お財布の中身ないの」

「それなら、俺が──」

「誰かさんがパチンコで全財産を注ぎ込んでしまったからね」

 店先で喧嘩をされては大変、と葉子も慌てて間に入った。


「お客さん、それなら通常の1/4の料金で提供出来るものがありますわ。

 形は変わってますけど、味は保証します」

 そう言って指差したのは、例の檻に入れられたスイカだった。