そういえば、誰かが言ってたっけ?

『君は、羽ばたいていいんだよ』

 あの時は、何を言っているのか分からなかった。
 けど、今なら分かる。

 あの時言葉を掛けてくれた人にもう一度会えるかは、分からない。

 唯、あたしは、あたしの信じる道を進む事に決めた。

 誰にも、邪魔させないんだから。



 今、目の前には温もりを感じる。

 彼には、過去を知られたくない。
 ──ずっと。

「奴らの仲間にされそうで恐かったから」

「悪い奴ら?」

 うん。
 黙って頷いた。

 半分は嘘、半分本当。

 何処まであたしを信じているのか分からない。

 彼は、それ以上何も聞かず、あたしの髪の毛を
 ワシャワシャ、て撫でてきた。

 身体のわりに、強くて優しい掌が、温かい。