プライド

サイモンが再び希望を取り戻したのは、バラにまつわるとても小さな出来事がきっかけとなった。



僕が彼の部屋を訪ねた後も彼の心はしばらく揺れていたが、気持ちの半分以上は引退を考えていた。
 
サイモンは毎晩のように飲みに出歩いた。

これから先の不安を酒で紛らわそうとしていたのだ。
 

その夜もサイモンは1人で行きつけのパブに足を向け閉店まで飲んでいた。



その帰り、部屋まで徒歩15分程の距離を歩いていると、歩道に何かが落ちているのに気付いた。

それは一輪の赤いバラだった。