友安は黙って、味噌(みそ)汁を飲み干した。
「あなたもそう思うでしょう?」
「そうだな」
 友安は否認するのが面倒で同意したが、その後はこの話題に乗らなかった。

 翌日永田町の首相官邸には、磨生首相、久坂公安大臣、江見(えみ)科学大臣、それに創世党最高顧問(こもん)大沢一郎の四人が参集(さんしゅう)していた。
 マスコミへの顔見世(かおみせ)が一段落すると、奥の応接室で四名の密談(みつだん)が交わされた。
「君の開発したウォーターマンは、順調に活躍している様だな」
 磨生とは大学の学友であり、地方行政と治安の最高責任者で、党内ナンバー3の地位にある久坂が、江見に話しかけた。江見久一(ひさいち)は、今年新設された科学省のトップである。科学者としてはサイボーグ学の権威(けんい)であり、国際的にその名声は轟(とどろ)いている。
「はい」
 江見は、白髪だらけの頭を縦に振った。
「後は、高山君の様な志願者が増えれば」
「高山君は創世党員であり、犯罪(はんざい)撲滅(ぼくめつ)計画(けいかく)を理解してくれたが、他の者は、計画の主旨には賛同しても、いざ体を改造されるとなると、どうしても後込みするな」
 久坂は秀麗(しゅうれい)な容貌で、磨生の方を向いた。磨生は目つきが鋭く、鷹を連想させる風貌である。百八十センチある偉丈夫(いじょうふ)の久坂とは対照的に、身長は百六十五センチ程しかない。ダークスーツに身を包み、低音で発言した。