高山は観念した。
「捨てよう」
「はい」
 二人はマシンガンを、前へ投げた。男は横田の腕を握りしめたまま、二丁のマシンガンを両手に抱えようと、屈(かが)んだ。その一瞬の隙をついてシュンスケが跳躍(ちょうやく)し、チタンのボディごとアタックしたのである。
 シュンスケと敵が揉み合っている間に、高山は横田の手をとった。
「ガガガガッ」
「ボクッ」
 男がマシンガンを発射するのと、シュンスケが頭を潰すのと、ほぼ同時だった。
「シュンスケ!」
 高山はシュンスケの重厚な体貌(たいぼう)を抱き起こした。北朝鮮人の頭(ず)骸骨(がいこつ)は粉々に砕け、脳が散乱してシュンスケの顔面に付着している。シュンスケの腹部には、弾痕があるだけだった。
 シュンスケは身を起こすと、屍(しかばね)を見下げた。
「警官の風上にもおけない」
「よかった」
 高山は、
「さっ行くぞ」
 と下命(かめい)した。
「あなた」
 横田は亡骸(なきがら)に悌(てい)涙(るい)している。
「御主人ですか?」
 高山の発問に、横田は沈黙を守った。
「何てことだ」
 高山とシュンスケは悲(ひ)別(べつ)に面した未亡人を前後で挟みつつ、北朝鮮の政治警察官達の死骸を踏み越えていった。