約束の三十分前に着いた。

…軽く走っておこう。


そう思ってスパイクに履き替えようとした時、シャッシャッという音が聞こえてきた。


グランドの隅の方で、足音と共に白い息が一緒になって動いている。

その音はやがてオレの近くまで聞こえてきて、目の前で止まった。


「あ…、おはよ東。」

「おす。早いんだな?」


「早く練習したくてさ。ずっと走ってた。でも、だいぶ鈍ってる。俺の足じゃないみたいだよ」



そう言ってまた走り出す悠弥のすぐ後ろを、走った。







キャッチボールをし終えた頃には、雪が本降りし始めたため練習を中止せざるをえなかった。


「なあ悠弥、帰りにバッティングセンターでも寄らねえか?」

「あ…悪い。この後用事入ってんだ。また誘って?」


そう言って荷物をまとめ、そそくさと帰って行った。



この時、すぐに悠弥の後を追っていたら変わったのかもしれない。

無理にでもバッティングセンターに行ってれば……。