【小春ー２１】

ども、コンチワ。



オイラ猫のプーってんだ



オイラはオイラって
言ってるけど、
これでもオイラ
メス猫なんだよ。



自由気ままな野良猫さっ



今日は暇だから
屋根の上で人間観察でも
しようかと。



ここの長屋は
なかなか居心地がいい。



みんな間が抜けてるから

餌取りたい放題。



ガラ…



お…アイツは…



弥吉って呼ばれてる人間だ。



アイツはいつも
魚を焼くとき
トイレに入るから、

そのスキに
オイラが奪うのさっ。



夜になると
猫より泣く奴だ。



ガラ…



お……



クネクネしてる
アイツが出てきた。



アイツ
名前がいろいろあって
分からない。


だからアイツ。



猫好きみたいだけど
ムキムキで気持ち悪いから、
近寄らないんだ。



ガラ…



ん…あの二人組は…



一人は色気がない女。



同じメスとしても
どうよ？



あれじゃ
男は捕まらないね。



黙ってても綺麗な
オイラみたいじゃないと



そんで
もう一人は、
油断ならないヤツ…



…ってあれ？



…いない？



バッ！



いきなり後ろから

何者かに
飛びつかれたが、

いち早く感づき
とっさに回避した。



にゃ！

コイツはさっき下に居た
ヤツ！！



プーは慌てて
向かいの長屋の屋根に
ジャンプして
自分の安全を確保した。



「先輩～
何やってるですか～」



下からの言葉を聞き、
ニヒっとプーに向かって
笑顔を見せると
彼女は降りていった。



プーはやっと落ち着き、
再び腰を下ろした。



ふう…

油断ならないヤツ…



「いや～おしかった。

もう少しで
毛皮が手に入る
とこだったのに」



…ホントに
油断ならないヤツ…