この日を境にTommyの夢は

それからしばらくの間

毎日続いた。

それは、

どうにか再会できた私たちが

『ああ良かった。もう二度と会えないのかと思った。』

と泣きながら抱きしめあう夢、

関西空港で最後に彼を見送った時を

再現している夢、

どれだけ探しても彼がいなくて

私を狂わせる夢、

ある時は

大切にしていたテディベアの

Tommyと一緒にいる夢だった。

Tommyと一緒だったあの頃は、

何度思い返しても夢のようだった。

とにかく写真をたくさん撮って、

何個もイラスト付きの

思い出のアルバムを作って、

ホームステイ先の子供と3人で

粘土遊びをしたりイラストを描いて、

メルボルンの

あらゆる場所にデートに出かけ

いつでもどこでも何度でもキスをして

旅行をして同じ景色をみて感動して

ありとあらゆる場所で

何百回とセックスをして

公園に行っては

周囲の子供が引くほど遊具で遊んで

料理を作って一緒に食べて

コーヒーを飲んで

一つ一つの些細な記念日ごとに

プレゼントを贈りあって

シンプソンズのホーマーの真似とか

サウスパークでケリーが死んだ後の

台詞の真似をしては

大笑いして、

本当にくだらない事で

大げんかして泣いて仲直りして

たくさんの夢を描いて語り合って

絶対結婚しようと軽々しく誓っていた。

何もかもが完璧すぎる程に

美しかった。

私にも、そういう時はあったのだ。  



毎晩見る夢だけが、あの頃の彼との

日常を鮮明に思い出させる

今はそこから

遠くかけ離れた所にいることを

毎朝自覚させる。

罪悪感と破壊願望とがリンクして

少しずつ確実に私を狂わせていった。

壊れていくのを

止めなければいけないと思う私と

壊れるなら

さっさと壊れて二度とはい上がりたくない

私の気持ちの中で、

更に深みにはまっていく私を

心のどこかでは傍観しながら。




それでもTommyの夢を見続けたかった。