7年後の2010年4月。

その様子だと、

もう気が付いているとは思うけど。

という前置きの後で、

「もう、楽にしてあげるね。」

そういって上司から渡されたのは

解雇通知だった。

こうなることは分かっていた事だけど、

本当にまた解雇されちゃうのか、

と思った。

もう過去に何度も経験済みだから、

さすがに頭は真っ白にはならなかった。

でも、

解雇される事に

相当慣れている自分自身が情けなかった。

「はい、分かっていた事だから大丈夫です。」

そう一言断って、

通知に署名しようとしたら、

「志保ちゃん、だめだよ。ちゃんと読んでから署名をしてね。」

と言われたので、

解雇なのが分かれば充分ですよと

心の中で文句を言いながら、

英文で書かれた解雇通知に

目を落とした。

上司は喋り続ける。

「せめてもと思って、ちゃんと特別に3ヶ月分の給料が出るように、最大限配慮したの。本当に、やりたくもなかっただろうに、マネージャーの仕事をここまで押しつけてしまって、ごめんね。PRのままだったら、良かったのに。」

「いえ、やるといって前任の後を引き受けたのは私なので、他の誰でもない、私の責任です。それよりも、たくさんご指導頂いたのに、何一つお役に立てなくて本当に、本当に申し訳ありませんでした。今日まで私を雇っていただいて本当に、ありがとうございました。ここでの毎日は、本当に幸せでした。」

そう返事をして、私は署名をした。

自分のオフィスの鍵を上司に返し、

荷物を整頓して、

会社携帯をおいて、

外へ出た。

もう4月だというのに

本当に寒い。

これで

もう明日から私の仕事はない。

又一つ、終わったのだ。