わたしの迷いに気づいたのか彼は足を止めると困ったように笑う。


「持って来るよ。いろいろあるけど、何がいい?」


「行きます」


 わたしは勢いよく返事すると立ち上がる。入口付近にいる彼の後をついて歩き出した。彼は階段をあがりだす。階段が軋むたびに、心臓が高鳴り、彼の背中を見てもっと緊張する。


 二階に行くと、彼は奥から一つ手前の部屋の前で足を止める。


「あっちが愛理の部屋」


 彼は奥の部屋を指し、正面の扉を開けて中に入っていく。少し覗くと、緊張で胸が高鳴る。彼の部屋はこざっぱりしていて、少し私の部屋に似ていた。


 本棚には問題集などの本が綺麗に並べられていた。机の上には黒のノートパソコンと数学の問題集が置いてあるだけだった。



「そこで見る?」


 いつの間にかスケッチブックを手にした彼が机のところに立っていた。


「入ります」


 私は緊張を抑えながら彼の部屋に入った。