「そうです。どうぞ」


 過剰に反応してしまったことが恥ずかしく、彼の顔を見れずにそれだけを渡した。


 だが、どんな顔で見ているのか結局気になり、ちら見すると、先輩はわたしから受け取ったスケッチブックを興味深そうに眺めている。


「先輩は絵が好きなんですか?」


「そこそこね」


「美術部に入っていたんですよね。いろいろかいたりしたんですか?」


「でも、そんなに熱心な部員でもなかったけどね」


 彼は悪戯っぽく笑う。


「先輩のかく絵ってどんな感じなんでしょうね」


 繊細で優しい絵をかくのではないかと勝手に考えていた。


「見たいなら見てみる? 部屋にあるはず」


 思いもよらない言葉に頷く。だが、部屋というのは当然ここのことを言っているわけでもない。


 彼が立ち上がり歩き出す。


 わたしはどうしたらいいんだろう。持ってくるとは言わなかった。


 ということは彼の部屋に行くということなんだろうか。