「テレビでも見る? DVDもいくらかはあると思うけど」


「でも、愛理もすぐに戻ってくるだろうし、そんなに長い時間はいられないからいいですよ」


「持って帰ってもいいよ」


「わたし、自分のパソコンって持ってないんです。だから借りても見られないと思います」


「別に無理強いをしているわけじゃないよ」


 彼は慌てた様子で、紅茶を飲んでいた。


 彼に気を遣わせてしまった。嘘でも借りるといえばよかったのかもしれない。わたしは本当に気が利かない。


 でも、借りても親や姉が占拠しているテレビやレコーダーに私が触れる機会があるとは思えなかったのだ。


「そのスケッチブック」


 突然言われた言葉の内容に関係なく、体がびくりと震えた。


 戸惑いながら彼を見る。


「それ見ていい? この時期ってデッサンとか描いていたけど、やっぱりそう?」