彼は家の前に来ると鍵を開ける。


「いつも家には誰もいないんですか?」


「両親は夜に帰ってこないことも多かったから。俺が高校に入ってからは余計にそんなことは増えたかな」


 扉を開けるとわたしを招き入れてくれた。


「さみしかったりはしないんですか?」


 わたし自身がそう思っていたというよりはよく物語などで親にほったらかされたとぐれたりするシーンを目にし、普通の家の子はそう感じるのではないかと思ったのだ。


 彼は靴を脱ぐと、困ったように肩をすくめた。


「考えたことはなかったよ。愛理がいたし、呼べば稜や佳織とかもいつでも来てくれたから。それに親が仕事をしているからのんびりとした高校生活を送れるわけだしね」


「そうなんですか」


 それが普通なんだろうか。わたしにはよく分からなかった。


 彼はスリッパを出してくれた。わたしはそれに足を通す。