「そうなんだ」


 佳織という呼び方に一瞬ドキッとした。だが、だれもその呼び方を気にしたそぶりはない。


 愛理は何かを思い出したのか小さく声を漏らす。


「先輩、この前言っていたお店ってどこにあるんですか?」


「いつもみたいに名前でいいよ。先輩ってくすぐったくて」


 少し困ったように笑う宮脇先輩を見て、愛理と依田先輩が笑う。


「あの奥になかった?」


「あの場所って人の家の中にはいるみたいで気が引けてしまったんです。本当にお店があるのかなと」


「案内するよ。どうせ愛理ちゃんの家に行くし、あとから一緒に行く?」


「わたしは一人で帰れるので気にしないでください」


 彼女がわたしを気遣ってくれているとわかったからだ。家に帰らずに直行したほうがいいに決まっている。