「あんまりみると引かれるよ」


「ごめんなさい。すごく可愛いなって思って」


 彼女は顔の付近で手を合わせた。


 わたしが彼女の様子に戸惑っていると、依田先輩が宮脇先輩の肩を軽くたたく。


「四月くらいから前原さんのことをあれこれ聞かれたんだよ。名前とかいろいろ」


「どうして?」


 一瞬、身構える。また何か言われるんだろうかという気持ちからだった。


「知りたいんだってさ」


 依田先輩と宮脇先輩は顔を合せて笑う。だが、そこには馬鹿にしたよう感情がにじみ出てはいなかった。


「咲、お待たせ」


 戻ってきた愛理は二人を見て足を止める。



「一緒だったの? 珍しい」


「佳織に貸したいものがあったんだ」