「少しいい?」


 彼女の細い指先が私の髪の毛に伸びた。再び私の体を離れた彼女の手に触れていたのは白い糸くずだった。


「ごめんなさい」


「わたしこそごめんね」


「宮脇」


 教室の扉のところに西原先輩が立っていた。


 宮脇先輩はそこをチラッと見ると、私に笑顔で声をかけた。


「私は教室に戻るね。またね」


 とりあえず頭を下げる。


「今から美術?」


 わたしが驚くと、彼は私のスケッチブックを指さしていた。


「懐かしいな」


 彼が美術部だったことを思い出していた。


「そういえば忘れ物?」