そこに並んだケーキからミルフィーユを選ぼうとしたが、食べるときにパイの部分がこぼれてしまうのではないかと考え直しその隣のイチゴショートを選んだ。


 それを依田先輩に伝えるが、彼は私が最初に目をつけたミルフィーユをフォークで注ぎ分け、お皿に乗せた。パイが少しだけお皿の上に散らばる。

「その隣の」


 だが、二人は目を合わせる。


 私の問いかけに答えたのは愛理だった。


「顔に書いてあるよ。これが一番食べたいですって」


「パイをこぼしてしまうかもしれないから」


「そんなの気にしなくていいの。二つあるから、私もきっとこぼすよ。だから気にしないでね。それにこんなにあるんだから好きなだけ食べてよ」


「ありがとう」


 どうして彼らは私の気持ちが分かるんだろう。今まで私の本当の気持ちに気付く人は滅多にいなかったから、すごく不思議な気分だった。


 ダイニングテーブルに愛理と並んで座る。そこに依田先輩が二人分の紅茶を運んできてくれた。