「絶対におにいちゃんには言わないでね。つけあがるから」

「言わないよ。でも、いいんじゃないかな」


 妹が大好きな兄と、兄が大好きな妹。


 私は姉とはそんなに親しくないからかそんな物語のような二人が少しほほえまかった。


 そのとき、リビングの扉が開く。依田先輩が入ってきたのだ。


 さっきまでの話のせいか愛理は兄の動きを目で追っていた。


 彼は愛理のそんな態度に慣れているのか気にしたそぶりもなく、冷蔵庫を開ける。


 そこから紙製の大きな箱を取り出し、ダイニングテーブルに置く。私を見ると手招きした。


「食べたいのがあったらとっていいよ」


「行こうか」


 愛理が私の肩を軽く叩く。