彼女は先輩を見て、私を見る。


 綺麗な人だったが、彼女の整った目鼻立ちは愛理を連想させ、一目で愛理のお母さんだと気付いた。


 彼女の視線が私の前で止まる。


「彼女?」


 先輩を見て弾むような声を並べた。


「私の友達です。そんな迷惑な勘違いをしないでください」


 彼女の背後には腕組をし、さめた目をした愛理の姿があったのだ。


「そうなの? 残念。こんな可愛い子は賢相手じゃ釣り合わないわよね。今度私がいるときに遊びに着てね」


 彼女は笑顔で言葉を残すと、そのまま家の外に出て行く。


 扉が閉まるのを確認し、愛理と目を合わす。


「もうとっくに出て行っている頃かと思っていたよ」


「今日は少し時間があったんだって」


 愛理と依田先輩は苦笑いを浮かべていた。