「じゃ、決まり。行こうか」


「迷惑じゃないですか?」


 その言葉に彼は不思議そうに首を傾げる。


「どうして?」



「突然家にお邪魔したりしたら大変かなって」


「そんなことないよ。むしろ俺達兄妹が君にまとわりついて迷惑をかけている気がするけど」


 先輩は歩き出す。私はその言葉に金縛りにあったように動けなかった。


「どうかした?」


 私と百メートルほどの距離が開き、彼は肩越しに振り向いていた。


 今、勇気を出していわないと、彼の口にした言葉が真実になってしまう気がしたのだ。


「迷惑じゃないです」


 やっと喉から振り絞った言葉に、先輩は一瞬目を見開き、屈託のない笑顔を浮かべていた。