with you

　人が多くなる夕暮れ時に人ごみの中に白いシャツを着た背丈の高い男性が歩いてくるのに気付いた。


　彼は私達と目が合うと、歩幅を縮め、その代わり足を出すタイミングを一気に加速させた。


　その茶色の日に透かせばより薄くなる髪を淡い夕日が照らす。


　彼は私達のところまで来ると目を細めた。


「どうして？」


「これを稜にもって来るように言われたんだ。あと、君が忘れ物を取りに学校に戻ったと聞いたから」



　依田先輩は持っていたノートを西原先輩に差し出した。


「わざわざこれを持ってくるために？」


　隣のクラスの授業日程は知らない。だが、西原先輩が依田先輩の家に一緒に行くか、依田先輩が彼の家に持っていくかという選択肢もあったはずだった。


　何でこんなタイミングに彼にこれをもってきてもらったんだろう。


　そう考えればある答えに行き着く。