「ああいうのは気にしないほうがいいよ。どこに行ってもああいう人はいるんだからさ」


 私は彼の言葉に小さくうなずく。


「慣れているんです。昔からそうでした。でも、慣れているはずなのに、ダメですね」


 自分の頬を思い切り抓った。


「そんなの慣れるものじゃないよ。それになかなかそこまでなれないと思う」


 彼の優しい言葉に視界が霞む。


「君はただ大人しくて、人見知りが激しいだけだと思うよ」


 今まで言われたこともない言葉に西原先輩を見る。


 彼は目を細めると、言葉を続ける。


「君を見ていると、人といるのが苦手なんだろうなと思うことがある。器用そうに見えるけどものすごく不器用で、影で人の何倍も努力しているんだろうなって思う」