「帰ろうか」


 言わなくても彼は私の気持ちを悟ってくれたのだろう。


 誰にも好かれる人はいない。分かってはいるが、知らなければよかったと思うことはある。


 彼女たちは私がどこかで聞き嫌な思いをしているとしっても自業自得としか思わないのだろう。


 靴箱で靴を履き替え、その足で校舎から出る。


 紫色の空が辺りを覆いつくす。また、家に帰って朝になって学校に行く。


 中学校のときの重い気持ちが心に連なっていく。


「さっきのあれでよかった?」


 私は小さく頷く。


「なら忘れるよ」


 先輩はそう笑顔で言っていた。