パシン、と、乾いた音が部屋に響く。 目の前には、涙目の女が立っていて、その瞳は俺をしっかりと睨んでいる。 …ああ、また同じだった。 このパターンは何回か見た。 俺が右ほっぺにビンタを食らって、女が泣いて怒って出て行くパターン。 だから驚かない。 「凛の馬鹿! もう私達別れよう!」 「…分かった」 「……引き止めもしないんだね」 なんで引き止めなきゃいけねぇんだよ。 「別れよう」、って言いだしたのはそっちじゃねぇか。