鏡の彼

 ある日、私は母に名前の由来を聞いてみた。

 リビングでくつろぐ母は悪気もなくこう言った。


「双子って分かった時、名前考えるの大変だったのよね……。性別だってまだはっきりとしてなかったし……」
 お菓子を摘む母に私は唖然とする。


「だから、男女どちらも付けてもおかしくない名前にしよう、って思ったのよ」
「はあ……」


 困惑する私。同席していた秋本くんも何だか戸惑いを隠しきれずにいた。


「もう、冗談よ冗談。本当はね……」


 母の話を聞いて、私はお腹の子の名を決めた。母は私に優気をくれた。彼には希望を与えようとした。

 優気と希望。誰もが持つ可能性。でもそれを信じるか否かは自分次第。だから、母はそれを自分の子供に賭けた。

 私も、この子に全てを賭けよう。母として、受け継いだ希望を胸に―