産声が響いた。新たな命の誕生。笑顔で祝福する看護師さんと男女の姿。男の人は女の人を気遣い、何やら言葉をかけていた。女の人はまだまだ苦しい表情を露にしている。

 タオルにくるまれた命が奥へと運ばれていく。残った看護師さんも必死に女の人を応援していた。


「もう一息ですよ……!」


 優しくも、興奮気味の看護師の声。男の人は女の人の手を握りながら、頑張れ、頑張れ、と繰り返している。

 と、そこへ女の人が大きく息を吐いていた。

 苦しみが和らいだような、そんな雰囲気にもとれた。しかし、新たな命が誕生すれば、産声があるはず。なのに、そこにはしんと静寂が漂っていた。

 女の人が顔を赤くしながらも、必死に何かを聞こうとしている。汗に顔をにじませながらも彼女は必死であった。


「あ、の……赤ちゃんは……?」
 男の人、おそらく父親になるであろうこの人の顔色もどこか浮かない。

 看護師が声を落とす。悲しげな表情が何があったのかを悟らせた。


「……赤ちゃんは、死産でした」


 産声が無いのはその為。そして、生まれた時にはすでに息が無かった。


「え……!?」


 女の人、すなわち母親はそう呟いた後、顔を歪ませて泣いた。父親である男の人に抱かれ、肩を撫でられていた。


「どうして……、どうして……!?」


 折角授かった命。彼女は双子を身ごもり、一人は無事にこの世に生を繋いだ。だけど、もう一人は……。

「最初に生まれたのは男の子です……でも、もう一人の女の子は……」


 そこで、場面は途切れた―