「どうした?」

 担任の教師がけげんな表情をして私を見ている。

 やがて、クラスの子達にも注目されている。

 正直、怖い。自分からどうかしよう、なんて考えてもなかった。中学の時もあれは友人である彼女に押されてのピアノ担当だったし。

「合唱コンクールの件なんですけど、選曲については特になんの決まりもなかったですよね……?」

 私の学校では課題曲がなかった。その変わり自由曲を念入りに練習している。大概は課題曲と自由曲の二曲があるものの、一曲ごとのクオリティは案外普通と言ってもよかった。しかしながら、この学校は一曲のみに専念できるため、クラスごとのクオリティはとても高い。

「だったら……その、今時の曲でもいい、ですよね……?」

 ベタな曲に縛られずに、自分達は自分達らしくクラスをアピールしてみては、と彼女がフォローしてくれた。

 やっぱり、私一人じゃ無理だった。でも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ前へ踏み出せた気がする。

(ありがとう……)

 そう、彼女と彼に私は言う。

「だが、審査の先生達にはなんと話せばいいか……」

 困り顔の担任。

 と、その時思わぬ救世主が私の前に現れた。