「あらー、授業で教えたはずでしょ。鎖の意味。鎖は召喚物の“契約書代わり”であると同時に、召喚物をこの世界に“存在させるための端子”でもあると。
別世界のものをこの世界に呼ぶ行為は案外ハイリスクなのよねー。
魚を空に呼び出すのと変わりないわ。魚が空で“溺れないためにも”鎖を持つあなたから魚は酸素を得る。
慣れさせていくのよ、“空で上手に泳げるように”。始めの内は、酸素供給代わりたる鎖は消せないけど。生物は世界に適応していくわ。
やがては鎖(酸素供給)なしでも、魚は自由に“空を飛べること”ができるでしょう」
先生がブリュンヒルデの手を触る。
ブリュンヒルデと先生の間には鎖と首輪がなかった。
それだけ彼女たちは長い年月を共にしているのだろう。


