瓦礫を踏む音。
影が俺に被さる。
震える俺の瞳が、上目遣いにソレを見た。
「――」
ソレは、夜から抜け出した人物だった。
星がまばらにしかない夜空から出てきたような、凛々しく綺麗な肢体。
肩まである藍色の髪に、黒い外套を着こなし、夜空の王みたいだ。
星があるみたいに輝きを忘れず、暗い怖さを持つくせに見惚れてしまうような人物。
横顔しか見えないけど、左目に赤い眼帯をそいつはしていた。
「……。何もする気はない。ただ単にこちらの世界に俺が来たかっただけだ」
ようやく対話した男は話が分かる奴らしく、安心しろと先生に言っていた。
先生がじっとソレを見つめて、向けていたステッキを下ろす。
どうやら害はないと思ったらしいけど、顔つきは厳しい。


