俺は凛が寒そうにしていたので、温かいコーヒーを買いにいった。

久々の海だったし、病院にいては外出も滅多にできない。
凛が心を落ち着かせられる唯一の時間だと思った。

俺は連れ戻すこともできたのに、そんな凛の時間を奪いたくはなかった。



!!!!

 戻って来てあまりにも驚き俺は持っていた缶コーヒーを砂の上に落とした。




彼女が海の中にいる。

慌てて俺も海の中に入った。

「どうしたんだ?!何やってるんだよ!!」

気がつけば腰が浸かるくらいまで深い所に居る。
小さい凛は胸くらいまで浸かっているのだ。

「風邪ひくだろ!!」
まだ入って5分も経ってないのに俺の体は凍えそうだった。

「急に海に入りたくなったの。」
彼女が言った。

「だからって、こんな寒い日に入ることないどろう。」
俺は焦った。これで風邪でもひいたら・・・。
大事に至らないだろうか。

すると彼女が言った。


「だって、私には時間がないもの。
 夏までは生きれない。たぶん、もう二度と海には入れない。

 だから、今を生きなきゃ。


 明日でさえも、生きられる保証がないの。」

 寂しそうな彼女の表情に一瞬言葉が出なかった。



 そうなのだ。


彼女は長くは生きれない。



でも・・・。



俺は彼女に言葉をかけたかったが、上手く出てこない。


結局俺は何もできない・・・。

無力だ。