俺は凛が入院している病院に会いに行った。

海はあの日から何も変わっていないのに、凛と俺の関係だけが、
やけに遠く感じた。



 海岸沿いを少し超えると、海の近くに病院が見えた。

俺は何度も凛に会った時のシミュレーションを心の中で繰り返した。
だが、実際この場所に来てみると何を話していいのかわからなくなった。


俺は病院に入った。

病院は想像していたイメージとは違い、綺麗な所だった。

外観は白く、中は窓が多く、開放的な印象を受けた。

 俺は受付で凛の病室を聞いた。

 208号室。

そう聞いて俺は部屋に向かった。



 俺はしどろもどろしながら、周りの患者の様子を見ていた。
部屋に向かうまで何人かの患者を見たが、とても穏やかな表情をしていて
とても死を目の前にしている人には見えなかった。


エレベーターで二階に上がると、208号室は、一番奥の個室にあった。

俺は少し、上を向き、大きく深呼吸した。


コンコン。

ドアをノックした。

しばらくすると、
「どうぞ。」
と凛の声が聞こえてきた。



俺はゆっくりとドアを開けた。



 そこには少しやせ細った凛がいた。
凛がいなくなった日からまだ2日も経っていないのに・・・。

病衣をまとう凛はやけに弱々しく見えた。

「凛。」
俺はそっと話しかけた。