その日は晴天だった。
まだ春だけど、天気がよくまさに海日和だ。

凛はお弁当を作り、朝から楽しそうだった。
俺は凛が準備している間にゴチャゴチャしていた助手席を
あたかも前から綺麗だったかのように完璧に片付けた。

助手席に誰かを乗せるのは久しぶりだ。


 この一週間で俺は、凛を一人の女性として意識し始めていた。
決して惚れやすい方ではないし、正直、女はウザいほど寄って
来るから不自由したことはない。

でも、凛の前だと驚くほど純粋で、臆病な男になっていることを
俺は怖いほど自覚し始めていた。

 お弁当を持った凛を助手席に乗せ車を走らせた。

 高速にのり、海へ向かった。

 車の中の彼女は昨日の夕食の時のように、
まるで遠足に行く子供のようにワクワクしていた。
俺は運転席から彼女を横目で見ながら、その姿を愛しく思っていた。


 2時間車を走らせるとようやく海が見えてきた。

彼女は口を開けたまま、青く広がる海を窓からずっと見ていた。

「窓を開けようか?」
俺は凛に言った。

彼女は声に出すことなくにっこりと笑い、大きく頷いた。

俺は彼女に微笑み返し、窓を開けた。

窓から入る風は少し肌寒かったけれど、
潮風が海にいることを体に教えてくれた。




しばらく海沿いを走り俺は浜辺の近くに車を止めた。

「着いたよ。」

そして、二人で砂浜に足をつけた。

「すごい。」

彼女が急にはいていた靴を脱ぎすて、
さざ波動く海の方へと駈け出した。

足を海水に浸けると、
「冷たい!」
と、笑いながらはしゃいでる。