「これ、すぐ歌える?」

「えっ?」

「すぐ聞いてみたい。」

「この歌詞でいいんですか?」
彼女が心配そうに聞き返した。

俺は自信満々に、
「もちろん。」
と、答えた。
 











・・・俺は驚いた。
普通、曲ができて歌詞を乗せるまでには時間が掛かるものだ。
ましてや一度や二度で合わせ、歌えるものではない。

だが、彼女はそれが当たり前かのように俺の前で歌ってみせた。

それも完璧に・・・。

美しく透き通るような声で。




「一度パートで区切って練習しようか。」
俺は始め、彼女にそう言った。


すると、彼女は首を傾げたのだ。
「私、すぐに歌えますよ。」

「えっ?」

「この曲を聴いてる時は常にイメージしてましたから。
それに普通、すぐ歌うものなんじゃないんですか?」

そうか・・・。音楽関係者ではない限り、作曲の流れはしらない。
凛に関しても同じだった。

それにしても、凛の話し方は本当に
すぐに歌えるかのように言いきった言い方だった。


確かに凛の音楽センスからいって、不可能ではないとも感じた。



俺は凛の可能性を信じ、レコーディングの準備を始めた。


そして、彼女にマイクの前に立つように話し、曲を流した。