俺は誰も座っていない席に目をやる。 少し前まで当たり前のように座って、俺に微笑みかけてくれていた梨乃はもういない。 今朝出勤した俺のデスクの上には、梨乃の転校を知らせる書類が置かれていた。 何かの冗談かと思った。 昨日の今日でそんなのありえない。 でも事務の女が怒り混じりに話した真実は、俺の期待を見事に裏切ってくれた。 「こっちも困るんですよ。急に転校とか。両親の都合で仕方ないとは言え、こんなの普通じゃ考えられないんですからね。」