いつのまにか、俯いて泣いていた私の頭上から聞こえた兄の声。 「……いい子だね」 昔から、いつも弟妹のお世話をしていた、面倒見が良くて、でもどこか頼りなさげで。 でも、それでも…… 私が泣いている時、いつも慰めてくれる声を聞いているだけでどこか落ち着くんだ。 「よしよし」って赤ちゃんをあやすように、頭を撫でられることも。 たまらなく心地よくて、心が穏やかになる。 まだ幼い頃、そんな兄の掌を“魔法の手”だと思っていた。