事務所内のろう下を歩き、タツがやたら私にすり寄ってくる。


「コハルちゃん! さっきオーディション会場で……あれマジでキスしてた~?」


「しっ、知りませ~んっ」


知りませんとか言って、顔真っ赤だし、バレバレだし。


「晴弥で陰んなって、ホントにやってるかどうか見えてなかったもんな。

だから……社長には、まだバレてない!」


「え、そう……なの?」


「そっ」


タツと私の会話を、晴弥は黙って聞いていた。