【美空サイド】


「……龍馬、寝てたでしょ?」


「いや、多分寝てない」


「……多分って……」


あたしは眩しく降り注ぐ太陽の光を恨めしそうに眺めている龍馬に呆れながら呟いた。


偶然道端で会ったあたし達。


互いに暇だと知り、駅前の映画館にやってきた。


「美空の好きな映画でいいから」


そう言っていたから、最近流行りの恋愛物にしたのに。


龍馬はものの5分で船を漕いでいた。


あたしの肩に頭を乗せて眠る龍馬。


柔らかい猫っ毛の髪に触れてみたいと思った。


でも、何となく勝手に触るのに抵抗があって。



嬉しいような、悲しいような、寂しいような……変な気持ち。


結局龍馬のことばっかり考えていて、映画の内容なんて全く頭に入ってこなかった。