でもどうすることもできず、制服のスカートをギュッと強く握る。


もう会えないの……?


この辺りで学ランが制服の学校は、一条工業だけ。


だけどあたしは、龍馬の名前と学校しか知らない。


どこに住んでいるのか。


何年生なのか。


彼女はいるのか。


聞きたいことが山ほどある。


もっと話したい。もっと龍馬を知りたい。


だけどあたしと彼に接点は何一つない。



言葉が続かずに黙りこんでいると、龍馬はピタリとその場に立ち止まった。


「俺、そこのカラオケBOXでバイトしてるから。暇なら遊びに来な。じゃあな」


すぐそばにあるカラオケBOXを指さすと、龍馬はヒラヒラと後ろ向きで手を振った。


その瞬間、中指にはめられたクロムハーツの指輪がキラッと輝いて。



「……カッコいい……」


そう呟きながら、ボンヤリと龍馬の後ろ姿を目で追う。


その背中が人混みに紛れてどんどん小さくなる。





「……一目惚れしちゃったかも」


あたしは未だにドキドキと高鳴る胸を両手でギュッと抑えた。