「ならさ、お礼に一発ヤラせてよ?」
「……へ?」
一発、ヤラせて?
って……それって……
「えぇぇぇ?!」
驚いて龍馬の顔を見ると、龍馬はケロッとした表情でポケットの中から取り出した煙草をくわえた。
「冗談。ほら、早く帰れ。もう助けらんねぇから」
人の心をこんなにかき乱しているのに、彼にその自覚はないみたい。
煙草の白い煙を口から吐き出すと、龍馬はあたしに背中を向けてスタスタと歩き出す。
「あの……龍馬!待って!!」
「何?」
歩き出した龍馬は振り返らずにそう答える。
「あの……えっと、そのぉ……」
何で呼びとめたのか自分でもよく分かんなくて。
呼びとめたってどうにもならないのに。
でも、もう二度と会えないかもしれないと考えると胸がギュッと締めつけられた。
まだ一緒にいたい。
もっと龍馬のことを知りたい。
一目惚れなんて、一度もしたことがなかったのに。
あたしの胸は何故かはち切れそうなほどドキドキと高鳴っていた。