【美空サイド】


「あのぉ、美空ちゃん……身動きが取れないんですけど」


「いいの」


耳元で囁かれて、内心ドキッとしたけどそれを隠し通して不機嫌を決め込む。


そんなあたしのご機嫌をとる様に、龍馬は「俺には美空しかいないって」とヘラヘラ笑いながら囁いた。



さかのぼること数十分前。


週末になりあたしと龍馬は映画館にやってきた。


でも、あたしがトイレに行っている間に龍馬は女の子に逆ナンされていた。


「超カッコいい!番号とか交換しません?!すごいタイプなんです」


女のあたしから見ても可愛いと思える女の子が、龍馬を上目遣いで見つめて口説き始める。


龍馬は動揺することも、喜ぶこともなくただ黙って女の子を見ていた。