「……それは分かったけど……どうしてその人がここにいるの……?」
部屋に入った美空は、チラチラと壁際に座る人物に視線を向けながら不安げに言った。
「今までのことは本当に悪かったと思ってる……」
「龍馬……どういうことなの?」
参ったな……どこから説明しよう……。
川上が申し訳なさそうに頭を下げると、美空はたまらず俺に目を向けた。
中3の夏、川上の歯を折ったのは俺だった。
「暴走族立ちあげるから、入らないか?」
隣の中学でそこそこ名の知れていた川上が何故俺を誘うのか不思議だった。
もちろん「めんどくさい」と断ったけれど、川上は何度も食い下がった。
それから数カ月後、俺は俊平と家の近くの公園で川上達に囲まれた。
俺は俊平にボコボコにされている川上をただぼんやりと眺めていた。
それでもまだ「俺達の仲間に入れ」としつこい川上の顔を一発だけ殴った。
川上によると、その一発で歯が折れたらしい。