必死に辺りを見渡しても、人のいる気配はない。 俺は壁にそっと背中を預けてポケットの中の携帯を取り出すと、美空に電話をかけた。 それは最後の賭けだった。 美空は電話に出ない。 だけど、携帯の電源が切れているわけではない。 もし美空が近くにいるなら、着信音がするかもしれない。 いや、バイブ音でも十分だ。 シーンっと静まり返っているこの場所で何か物音がすれば…… 美空が近くにいるということだ。 ≪ブーッブーッ!!≫ すると、ゴミ捨て場の脇で携帯のバイブ音が聞こえた。