「優……お母さんは……」


「僕を心配してくれてるのは分かるよ。だけど、もう僕は我慢しない。父さんのことももう負い目に感じるのは止めるよ。僕は僕の思うがままに生きる」


「だからってあの不良と……」


「龍馬がもし不良だとしても、僕は龍馬と友達だ。それを母さんにとやかく言われる筋合いはない。母さんは龍馬の何を知ってるんだ」


「優……」


母さんは目を見開いて驚きを露わにする。


今まで一度たりとも反抗をしたことのなかった息子が急に怒りだした。


その事実にショックを受けているのかもしれない。


動揺しているのか口元が小刻みに震えている。



「……ごめんなさい。今日は……帰るわ。ゆっくり休みなさい」


母さんはおもむろに立ち上がると、病室の扉に向かって歩き出した。


「また……お菓子作ってよ」


ねぇ、母さん。


いつかみたいにまた美味しいクッキーを焼いてよ。


僕は母さんの焼くクッキーが大好きだった。


「……えぇ。分かったわ」


母さんは震える声でそう言うと、病室から出ていった。