「出せなかったとも言うかも」 手を出したらメソ男との約束を破ることになる。 だからあいつだけを逃がして一人でやられる覚悟を決めていたのに。 袋叩きになっているところをメソ男には見られたくなかった。 適当に受け身をとりつつ殴られ続けて、少ししたら地面に倒れたふりをしてしのごうと思っていたのに。 それなのにあのバカは戻ってくるやいなや、傘で俺の頭をぶったたきやがった。 あの一発は案外強烈で。 脳が揺れて一瞬、目の前が真っ黒になった。 ……メソ男が本気を出せば、川上より強いかもしれない。